AUTOSARシステム設計機能を統合したアーキテクチャーツール

PREEvisionは、AUTOSARの多数の概念を取り入れたソフトウェアおよびハードウェアアーキテクチャーの開発をサポートします。
PREEvisionが採用している統合型のアプローチにより、AUTOSARに準拠したシステムおよびソフトウェアの設計から、要求エンジニアリング、バリアント管理、品質管理などのその他の活動への直接のリンクが可能になります。
特長
- ソフトウェアアーキテクチャーのグラフィカルなモデリング
- AUTOSARソフトウェアコンポーネントテンプレートをサポート
- AUTOSARバージョン3および4のインポートおよびエクスポート
- ソフトウェアのタイプ、プロトタイプ、インスタンスの自動同期
- ソフトウェアコンポーネント、インターフェイス、データ型をライブラリーに基づいて管理
- AUTOSARに対応したモデリングを検証するための整合性チェック
- ソフトウェアコンポーネントの結合、再配置、分割と、ポート接続の自動化機能
PREEvisionは機能指向またはサービス指向の設計をサポートしており、AUTOSARに準拠したシステムおよびソフトウェアアーキテクチャーをモデル化するためのダイアグラムとテーブルを備えています。
ソフトウェア設計
AUTOSARでは、車両全体のソフトウェア機能をソフトウェアコンポーネントのシステムとして定義します。これらのソフトウェアコンポーネントはポートによって相互接続され、インターフェイスを介して情報を交換します。 PREEvisionはAUTOSARの「タイプ-プロトタイプ-インスタンス」コンセプトをサポートします。
自動同期により、たとえば最初にライブラリーで型を作成し、それからプロトタイプを導出する場合でも、あるいはプロトタイプを直接モデリングに使用する場合でも、整合性のあるモデルが常に保証されます。整合性チェックもこうした設計を支援します。
このシステム、すなわちAUTOSARで「Virtual Functional Bus (VFB)」とも呼ばれるこのシステムの開発にあたり、PREEvisionは以下の優位性を備えています。
- ソフトウェアアーキテクチャーをグラフィカルにモデリングするためのダイアグラム
- ソフトウェアのタイプ、プロトタイプ、インスタンスの自動同期
- ソフトウェアコンポーネント、インターフェイス、データ型をライブラリーに基づいて管理
ソフトウェア設計のサポート:
- ソフトウェアコンポーネントの結合、置換、分割
- ポートの自動接続
- ポートインターフェイスのプロパゲーション
- ポート、接続、インターフェイスの割当てなどを作成および編集するための専用のエディターとビュー
- ソフトウェアコンポーネントの内部動作、トリガー、パラメーター、管理用データをモデル化するためのエディター
- 特殊な要求に対応するための、カスタム属性
トポロジー
多くの場合、車両ネットワークにはそのためのトポロジー、すなわちハードウェア設計が用意されています。もし用意されていなければ、ネットワークトポロジーの記述が必要になります。車両ネットワークは電子制御ユニット (ECU)、センサー、アクチュエーター、バス接続、およびバスシステムなどのハードウェアコンポーネント (HWC) から構成されます。PREEvisionは、以下の機能を通じてハードウェアの開発と記述をサポートします:
- ハードウェアアーキテクチャーをグラフィカルにモデリングするためのダイアグラム
- ハードウェアコンポーネントの再利用
- ハードウェアコンポーネントのタイプの変更
- バスのタイプの変更
ソフトウェアとハードウェアのマッピング
AUTOSAR通信設計
ソフトウェアとハードウェアのマッピングにより、どのデータエレメントがECU内部で伝送され、どのデータエレメントがバス経由で伝送されるかが定義されます。PREEvisionはCAN、CAN FD、LIN、FlexRay、Ethernetのバスシステムに対するAUTOSAR通信設計をサポートします。
コードの保管
PREEvisionでは、Collaboration Platform のSVNサーバーの統合により、ソフトウェアコンポーネントを実装するための設計要素も管理できます。 これらはバージョンおよびリリース管理 の対象となります 。
AUTOSARのインポートおよびエクスポート
PREEvisionからは、Software Component Descriptionやサプライヤー向けのECU Extractなどをエクスポートして送付できます。
AUTOSAR のバージョン | System Description | Software Component Description | ECU Extract | System Extract |
4.0.3 | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
4.1.1 | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
4.2.2* | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
4.3.0** | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
4.3.1*** | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
4.4.0*** | インポート/エクスポート | インポート/エクスポート | エクスポート | エクスポート |
この表は、各AUTOSARバージョンでエクスポートできるAUTOSAR形式を示しています(*PREEvision 8.0以降、**PREEvision 9.0以降、***PREEvision 9.5以降)。ARXMLスキーマのサポートに関する詳細をご希望のお客様はお問い合わせください。AUTOSAR Adaptiveの形式についてはこちらをご覧ください。
AUTOSARツールチェーン
PREEvisionはベクターのAUTOSARツールチェーンに属する製品で、CANoe、DaVinci Developer、DaVinci Configurator Pro などのツールとの連携が可能です。
統合型のAUTOSAR設計
PREEvisionの統合型のAUTOSAR設計は他の設計活動にも組み込まれています。このツールは操作の原理が全般的に似通っており、また外観も統一されているため、効率的な操作が可能です。それぞれの機能をあらかじめマスターしておく必要はありません。
統合型の 要求管理 により、要求をテキストなどの形でAUTOSAR環境で作成またはインポートし、それをAUTOSARエレメントとリンクすることが可能になります。 PREEvisionは以下の機能を通じて要求管理をサポートします。
- 要求のRIFでのインポート
- カスタマーフィーチャーの定義
- ハードウェアとソフトウェアの実装とリンク可能な、抽象化された論理アーキテクチャー層の定義
- カスタマーフィーチャーを、論理アーキテクチャー層の制御シーケンスとして具体化
- ソフトウェアコンポーネントへの要求のマッピング
- 要求ドキュメントの自動作成
プロジェクトプランニング、プロジェクトの追跡、変更管理は、ソフトウェア開発プロジェクトの枠組みに含まれる不可欠の要素です。PREEvisionでは、これらはAUTOSARエレメントに直接関連付けられているため、開発のステータスをいつでも確認できます。
- 統合型のプロジェクトプランニングおよびプロジェクトの追跡
- 統合型の変更管理
- バージョン、ブランチ、ベースライン
- 比較およびマージ機能
PREEvisionでは、過去に仕様化および開発されたハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを簡単に再利用できます。PREEvisionはプロダクトライン内だけでなく、プロダクトラインをまたいでの再利用もサポートします。
- 複数のプロダクトラインのサポート
- 多様なプロダクトラインでのコンポーネントの再利用
- 要求ドキュメントの自動作成
車両バリアントは通常、ある車種全体に装備されるすべての機能を包含したプロダクトライン (「150%モデル」) から派生します。これにはたとえば、各種のパワートレーン技術を相互排他的に採用するケースなどが含まれます。PREEvisionは以下のような、カスタマーフィーチャー間の論理条件を持つフィーチャーモデル によって、 バリアント管理 をサポートします。
- フィーチャーに基づく製品の自動派生など、フィーチャーツリーによるモデリング機能を統合
- 自動プロパゲーションのための設定可能なルール
- 整合性チェック
製品開発は一般に、自動車メーカー (OEM) 単独ではなく、1社、あるいは複数のサプライヤーとの連携によって行われます。PREEvisionには双方向型の通信インターフェイスがあります。
- AUTOSAR形式 (ECU Extract、Software Component Descriptionなど)とレポートの生成が可能
- サプライヤー側の変更と修正をインポート可能
品質保証は、サプライヤーから届いたハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントを、自動車メーカーが仕様に照らしてテストする際に使用されます。PREEvision に統合されているテスト管理システムは、以下のような数多くのテストをサポートします。
- 要求ベースのテスト
- フィーチャーテスト
- コンポーネントテスト
- 統合およびシステムテスト
AUTOSAR設計では一般に複数のチームで作業が進められます。データソースを集中管理し(シングルソース)、システム全体とすべての技術的レイヤーにおよぶ依存関係の追跡を可能にし (トレーサビリティー)、構文とセマンティクスの一貫性を保証することが、PREEvisionのコラボレーション環境 の主な仕事です。
- 中核となるデータベースの共有
- 一貫性のあるデータセット
- 高コストのデータのマージは不要
- 役割およびアクセス権管理によるデータへのアクセス制御
- 自動ロックの概念によるデータの衝突の回避
- バージョン管理による全成果物のトレーサビリティーと開発の整合性の実現
- 設定可能なライフサイクルモデルによる、特定の組織に応じたワークフローの管理
- プロダクトおよびリリース管理のほか、変更管理も統合
- SVN接続を使用したファイル管理

テクニカルアーティクル
AUTOSAR Classic/Adaptiveシステムのギャップを埋める
サービス指向のソフトウェアアーキテクチャー
AUTOSAR Adaptiveは、AUTOSAR Adaptiveに基づくハードウェアやソフトウェアを既存のAUTOSAR Classicシステムのコンポーネントと円滑に連携させることができれば、問題なく導入できます。システム全体を異なるプラットフォーム間で最適な形に実装することはE/E開発にとって次なる大きな課題の1つですが、これら2つの規格のギャップを埋めてくれるのがサービス指向アーキテクチャーです。
本稿は、『Elektronik automotive』11/2019号(2019年11月)に掲載された記事内容を和訳したものです。
資料
テクニカルアーティクル

システム全体に目を向ける
一貫したAUTOSARシステムビューの実現に価値がある理由
13年前に産声を上げたAUTOSAR仕様は、今日では効率的なE/E開発(電気/電子開発)を実現するものとなりました。そしてそのシステム思考は、近年も継続的な拡張が行われる一方で、今なおこの標準規格を支える柱であり続けています。AUTOSARは常に、個別のECUや通信バスにではなく、システム全体に目を向けてきました。デジタル化が進む自動車業界では、このようなシステムへの視点、すなわちシステムビューの果たす役割がさらに重要なものとなりつつあります。この視点こそが、「Adaptive Platform」とともに、次世代の車載エレクトロニクスシステムへの道を開いてくれるのです。
本稿は、ドイツで発行された自動車技術誌『Elektronik Automotive, issue 10/2016』に掲載された記事内容を和訳したものです。