車載Ethernet通信設計
PREEvisionのユースケース

サービス指向アーキテクチャー(SOA)と車載Ethernet

ゼロからのEthernetネットワークの設計

Ethernetは、ネットワークや接続性に対する要求の拡大に伴い、自動車業界でも幅広く使用されるバステクノロジーの1つとなりました。

PREEvisionは、AUTOSARに準拠するEthernetネットワークおよびクラスターの設計を、対応する通信も含めてサポートします。このモデルベースのエンジニアリング環境では、組込ソフトウェアシステムのサービス指向アーキテクチャーにも対応できます。

特長

  • ゼロからEthernetを設計するための専用のUI
  • AUTOSARに対応した設計を促進する整合性チェック
  • サービス指向アーキテクチャー設計のためのSOAダイアグラム
  • サービスおよびサービスインターフェイスのモデリング
  • VLANとサービス品質を定義するためのスイッチ設定
  • シグナルルーターがスイッチ設定を考慮し、通信のための設計要素を生成
  • EthernetシステムのためのAUTOSARのインポート/エクスポート

ユースケース

Ethernet技術は車両内だけでなく、車両と周辺環境あるいはインターネットとの通信やアプリケーションに必要な適切な帯域幅を実装することができます。

当初の用途はオンボード診断、充電ステーションとの通信、カメラを利用したドライバーアシスタンスシステムなどでしたが、そのアプリケーション分野は現在も拡大を続けています。

PREEvisionにおける車載Ethernetの通信設計ワークフロー

PREEvisionはEthernetネットワークの設計をゼロからサポートします。専用のダイアグラム、エディター、自動化、生成機能により、AUTOSARに準拠したEthernet設計を、通信設計も含めてスピーディーにセットアップできます。

 

機能概要

Ethernetエクスプローラー

Ethernetエクスプローラーは、Ethernetネットワークの設計と定義に必要なすべてのエディターと機能を備えた、PREEvisionの専用のユーザーインターフェイスです。抽象的サービスの定義から、Ethernetシグナルやソケットアドレスの要求定義に至る設計プロセスの全行程で、直観的に作業を進めていくことができます。

 

このエクスプローラーはゼロからのEthernet設計をサポートしますが、既存の設計の一部が利用できる場合に備えて、それらを取り込むことのできるポイントも多数装備しています。また、エクスプローラーには、テーブルやダイアグラムなどのエディターのほか、完全なEthernetネットワークの設計に必要な設計要素の大半を作成できる機能と自動化が含まれており、煩雑でミスしやすい作業の多くをPREEvisionに任せることができます。

SOAダイアグラム

ユースケースと導出されるサービスを抽象的に定義するためのPREEvisionのSOAダイアグラム

サービス指向アーキテクチャー(SOA: Service-Oriented Architecture)は長らくIT業界で使用されてきましたが、近年は自動車業界でもサービス指向設計が重要な地位を占めるようになりました。その実現のため、Ethernetネットワークがよく使用されています。

PREEvisionには、ユースケースおよび導出されるサービス、サービスロール、サービスインターフェイスを抽象的に定義するための、SOAダイアグラムが用意されています。UMLに基づくグラフィカルな表記法により、サービス指向アーキテクチャー内での依存性と関係性を表現することができます。

サービス間の依存関係は、SOAポートを介して情報を交換するサービスプロバイダーとサービスコンシューマーを定義し、それらのタイプを後からサービスインターフェイスで指定することにより視覚化できます。

サービスの実装

サービスとミドルウェアの概略図

従来の車載バスシステムと比較すると、Ethernetの設計には、機能主体のアプローチではなく、サービスの概念が使われているという基本的な特徴があります。

 

PREEvisionはサービスロールとそれらのサービスインターフェイスを含めた、サービスの定義をサポートします。

サービスはSOAダイアグラムでグラフィカルにモデル化できます。PREEvisionでのSOA設計は、原則としてテクノロジーに依存しません。しかし現在、AUTOSAR Classicへのテクノロジーのマッピングが最も適切にサポートされています。これにより、ソフトウェアコンポーネントを使用してサービスインターフェイスを実装できます。

サービスのデプロイ

PREEvisionはハードウェアトポロジー、すなわちセンサー、アクチュエーター、ECU、電源のネットワークのセットアップをサポートします。CAN、LIN、FlexRayなどの他のバステクノロジーをゲートウェイを介してEthernetに接続する、混合型のトポロジーも設計できます。

 

PREEvisionのインポート機能により、既存のトポロジーをモデルに統合して使用することもできます。サービスインターフェイスを実装するソフトウェアコンポーネントは、ECUなどのハードウェアコンポーネントか、それより詳細なソケットアドレスのいずれかにデプロイできます。

サービス設計から通信設計まで

スイッチ設定

ポイントツーポイント接続によるスイッチトポロジー

Ethernetでは、接続はすべてスイッチによってリンクされたポイントツーポイント接続です。

 

スイッチ接続されているEthernetクラスターのネットワークは、論理的に異なる仮想ネットワークに分割できます。

いわゆるVLANでのこのような通信の分割は、セキュリティー上の理由から、あるいは異なるレベルのサービス品質を定義する目的で使用されます。

PREEvisionは手動でのスイッチ設定をサポートしますが、これはシグナルルーターで考慮されます。あるいはシグナルルーターで初期スイッチ設定をセットアップし、それを後から編集することも可能です。

Signal Router and Communication Design

PREEvisionのシグナルルーターは主にCANでのシグナルのルーティングやワイヤーの配索に使用されますが、このツールはEthernetネットワークの設計でも威力を発揮します。シグナルルーターは通信パスを探すだけでなく、必要に応じて有効なスイッチ設定を作成することもできます。さらに、整合性のある設計に必要な、通信のための設計要素を多数生成します。

 

また、Ethernetの通信設計には、IPアドレス、トランスポートプロトコル、ポートを指定してソケットを定義する作業が不可欠です。AUTOSAR Adaptiveの場合はソケットアドレスの記述があれば十分ですが、AUTOSAR Classicの場合はシグナルレベルも指定しなければなりません。シグナルルーターとその他の自動化および生成機能は、通信のための設計要素を作成するという、ミスの発生しがちな作業の大半を、ユーザーに代わって処理します。

PREEvisionにおけるEthernetのサービスおよび通信設計

AUTOSARのインポートおよびエクスポート

PREEvisionではAUTOSAR classicへのテクノロジーのマッピングが可能ですが、これではEthernetもサポートされます。そのため、AUTOSARを介してEthernet設計をインポート/エクスポートできます。

 

PREEvisionはベクターのAUTOSARツールチェーンに属する製品で、CANoeDaVinci DeveloperDaVinci Configurator Proなどのツールとの連携が可能です。

 

次の表は、各AUTOSARバージョンでエクスポートできるAUTOSAR形式を示しています。 ARXMLスキーマのサポートに関する詳細をご希望のお客様はお問い合わせください。

AUTOSAR のバージョン System Description Software Component Description ECU Extract System Extract
3.2.2 インポート/エクスポート インポート/エクスポート エクスポート -
4.0.3 インポート/エクスポート インポート/エクスポート エクスポート エクスポート
4.1.1 インポート/エクスポート インポート/エクスポート エクスポート エクスポート
4.2.2
(PREEvision 8.0より)
インポート/エクスポート インポート/エクスポート エクスポート エクスポート

 

2017年3月のAUTOSAR Adaptiveの発行は、サービス指向アーキテクチャーを業界全体で標準化するための重要な一歩です。PREEvisionは近日中にAUTOSAR Adaptive用のテクノロジーマッピングを提供する予定です。

資料

テクニカルアーティクル

サービス指向アーキテクチャー(SOA)と車載Ethernet

自動車を「走るデータセンター」に ~ 開発を支えるモデルベース手法 ~

サービス指向アーキテクチャー(SOA: Service-Oriented Architecture)は、長らくIT業界で分散システムの記述と構造化に使用されてきました。近年、このサービス指向の設計は自動車業界でも急速に存在感を増しており、「自動車にも、スマートフォンで使えるような一連の機能を導入したい」という声の高まりに応えるためには欠かせない手法となっています。しかし、自動車業界におけるSOAは、モデル保守から自動運転やV2X通信などのテクノロジー導入に至るまでの、新たなる要求にも対応することが求められています。

ベクターのモデルベースE/E開発ツール「PREEvision」は、方法論に基づいた整合性あるサービス指向アーキテクチャーの設計をサポートします。ユーザーはサービスインターフェイスの定義からサービスのインタラクションの指定、そしてAUTOSARに対応したEthernet設計に至るまで、すべてを統合されたワークフローに沿って進めていくことができます。Ethernetに加えてCAN、LIN、FlexRayなどの他のバステクノロジーも使用する場合は、混合型トポロジーも設計できます。システム設計者はPREEvisionを使用することで、従来の組込設計と最新のサービス指向を用いたバックエンド通信とを組み合わせるという困難な課題を解決できます。このようにPREEvisionは、自動車を「走るデータセンター」へと変貌させることを強力にサポートします。

本稿は、ドイツで発行された『Elektronik automotive, magazine Special issue, Automotive Ethernet – March 2017」に掲載された記事内容を和訳したものです。

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