バーチャルテストドライビングによるADASテスト
DYNA4は、ドライバーアシスタンスシステム(ADAS)と自動運転(AD)システムの機能開発を目的とするモジュール式の柔軟なシミュレーション環境です。DYNA4でADAS/ADのテストを行うことにより、バーチャルテストドライビングが持つ以下の主な要件を満たすことができます。
信頼性の高いシミュレーションモデル
- 静的環境: 道路、道路標識など
- 動的環境: 道路使用者、動物など
- センサーモデル: 異なる抽象化レベルを用いて、環境をバーチャルに検知
- 車両ダイナミクスおよびドライブトレインモデルにより、搭載されているセンサーも含めたテスト対象車両のリアルな動作を再現
統合を容易にする標準規格の採用
- 道路網にはASAM OpenDRIVE
- センサーインターフェイスにはASAM OSI
- 結果データにはASAM MDF
- DYNA4モデルのエクスポートや機能のインポートにはFMI
- 拡張性とカスタマイズ性の確保には、オープンなUnityベースの3D環境
柔軟なテスト実行
- MILからSIL、そしてHILまで: モデルベースのコントローラー開発(MIL)、Software-in-the-Loop (SIL) システム、Hardware-in-the-Loop (HIL) 試験装置に対応
- 以下を始めとする多様な実行環境に対応:
- Simulinkのネイティブ実行モード
- WindowsまたはLinuxの実行ファイル
- CANoeコンフィギュレーションに統合されたCANoeモデルライブラリ
- サードパーティのツールチェーンに統合されたFMU
- 多くの一般的なリアルタイムプラットフォーム
- 単一のデスクトップコンピューターから、CIパイプラインへのフル統合に至るさまざまな規模に対応
特長
- 包括的なテスト: 異なるパラメーターとテスト自動化機能を使用し、数千キロに及ぶ自動走行テストを再現可能
- 早期のエラー検出 : ADAS/AD開発プロセスの早い段階で異常を修正し、開発コストを抑制
- 安全性の向上: クリティカルな交通および衝突シナリオを危険なくシミュレーション
- 工数の削減: ベクターのツールチェーンやサードパーティのツールチェーンへのスムーズな統合
適用分野
- 環境認識: 車線検出、交通信号の識別、オブジェクト検出、Simultaneous Localization and Mapping (SLAM) など
- コンフォート機能: アダプティブクルーズコントロール(ACC)、渋滞時走行支援、パーキングパイロットなど
- 安全システム: プリクラッシュ、前方衝突警報(FCW)、自動緊急ブレーキ(AEB)、レーンキーピングアシスト(LKA、ELKA)、ブラインドスポットモニターなど
- Car2x: 通信による協調走行
ADASテストのモデルとコンポーネント

ADAS機能をMILからHILまでシームレスに統合
- Simulink: 開発した機能をDYNA4のSimulinkベースのモデルに統合するか、DYNA4モデルをS-functionとしてエクスポートし、Simulinkモデルに統合
- Cコード: 機能のコードをS-FunctionとしてDYNA4のSimulinkモデルに統合するか、CANoeのSIL Adapter Builderを使用して、DYNA4モデルでCANoeシミュレーションを実行
- AUTOSARコード: 仮想ECUにvVIRTUALtargetを使用して、DYNA4モデルでCANoeシミュレーションを実行
- FMU: 機能をFMUとしてDYNA4モデルに統合するか、DYNA4モデルをFMUとしてエクスポートし、好みの環境で実行
- 実際のECU: DYNA4モデルをベクターVTシステムまたはその他の一般的なリアルタイムシステムで実行し、実際のECUをHIL試験装置上でテスト

センサーモデル
- レーダー、LiDAR、カメラ、超音波センサーのための汎用的でパラメーター化可能なモデル
- ASAM OSIに基づく、標準化されたセンサーデータ出力
- ASAM OSIを入力として使用するカスタムセンサーモデル
- オブジェクトレベル: オブジェクトリスト、検出された車線など
- 認知レベル: レーダーのレンジドップラーマップ、カメラ画像、セグメント化されたカメラ画像、LiDAR点群、セグメント化されたLiDAR点群、超音波ヒストグラムなど
- 物理的に正確なテスト対象車両のダイナミック挙動によるセンサーのリアルな動作
続きを読む: DYNA4によるセンサーシミュレーション

トラフィック: 動的環境
- 複雑な道路網での周辺車両、歩行者、動物などのシミュレーション
- 規制や専門的な情報に基づく特定のシナリオにおいて、テスト対象システムに適用される決定論的なタスク
- カバレッジの拡大と耐久テストを目的とした確率論的なトラフィック
- 道路使用者の幅広いアニメーションカタログ

静的環境
- ASAM OpenDRIVE道路網モデルのネイティブサポート
- ASAM OpenDRIVEに基づき、車線、道路標識、交通信号などを自動生成して視覚化
- Unityベースの視覚化機能を、付属のアニメーションオブジェクトカタログやカスタマイズした3Dオブジェクトで拡張可能
- 雨、霧、雪、夕暮れ、夜明けなど、天候やライティングを調整可能

テスト対象車両
- 詳細レベルを選択できるリアルなドライビングダイナミクス
- 乗用車と最大2台のトレーラーを牽引する商用車
- エンジントルク、ブレーキ、ステアリングなどの操作
- ドライバーの運転タスク
- 動的/静的環境とクローズドループのインタラクション
統合およびワークフロー機能

DYNA4モデル
- DYNA4モデルを使用し、開発した機能をクローズドループシミュレーションでテスト
- 機能への入力と、利用可能なパラメーターに応じて適切な詳細レベルを選択
- 必要に応じて独自のモデルコンポーネントを統合
テスト対象システム(SUT)の柔軟な統合
- DYNA4のオープンインターフェイスを使用することにより、開発した機能をMILからSIL、HILへと簡単に統合可能
- DYNA4モデルをSimulink、デスクトップPCでの実行可能ファイル、その他一般的なHILプラットフォームなど好みの環境で実行
- DYNA4を実行マスターに選択して、DYNA4標準のワークフローを使用するか、DYNA4を既存のツールチェーンに統合
物理ベースのセンサーモデルと視覚化
- カメラ画像、LiDAR点群、超音波ヒストグラム、レンジドップラープロットなど、物理ベースのセンサーモデル
- 幅広いオブジェクトカタログと独自ジオメトリによる拡張性を備えたUnityベースの3Dアニメーション
- 自動生成された道路や地形も含むシミュレーション結果を、実行時に任意の解像度(最大4K)で視覚化
テストの自動化
- DYNA4を実行マスターとし、組み込まれているタスクのシナリオを使用して包括的なテストを実施
- 実行マスターとしてCANoeを使用する場合は、vTESTstudioを使用してテストを自動化
- 外部テスト自動化ツールをAPIで接続
レポートの作成
- 標準のMDF形式で結果をエクスポート
- レポートの自動生成
- vSignalyzerやvMDMなどのベクター製ツールを使用することにより、広範囲な結果の解析が可能
バーチャルADASテストの標準規格

分散した車両機能、特にADASや自動運転の機能の複雑化に伴い、シミュレーションは機能の開発から妥当性確認に至る標準ツールとなりました。しかし、仮想的なテスト走行、すなわちバーチャルテストドライビングを、複数の分野をまたいで柔軟に、しかも継続的に使用できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。システムインテグレーション、データ管理、テスト評価の各領域では、OpenDRIVE、OpenSCENARIO、OSI、FMI、MDFなどの標準規格が重要な基盤的役割を担っています。
テクニカルアーティクル「バーチャルテストドライビングの標準規格(Hanser Automotive 2020年6月号掲載)」では、標準規格を一貫して使用することにより、開発プロセス全体を通してバーチャルテストドライビングの継続的な再利用が可能になることを説明しています。