V2Xベース通信アプリケーションのシミュレーション、開発、テスト
CANoe.Car2x
オプションCar2xは、V2Xアプリケーションメッセージに基づいた他の車両や交通インフラストラクチャと情報を交換するアプリケーションや機能の開発、またECUテストに適しています。V2Xドメイン固有の測定Windowにより、あらゆるプロトコルレベルの通信を効果的に解析できます。幅広い機能を備えており、交通シナリオに基づいたV2X機能への刺激入力、V2X固有のテスト関数を使用したテストの実施が可能です。
CANoe.Car2xは、お客様の要求を最適な形で満たすように設計されており、V2Xドメインの要件に、ゼロから取り組むために開発されたツールです。CANoe.Car2xは、GB/T(中国)、ETSI(EU)、IEEE(米国)でリリースされた規格およびプロトコルをサポートしています。これには、CAM、DENM、SPaT、MAP、BSM、IVIM、SREM、SSEMなどのアプリケーションメッセージや、中国のDSMP、EUのGeoNetworking、米国のIEEE1609(WAVE)などの下位プロトコルも含まれています。無線LAN規格については、WLAN IEEE 802.11pと3GPP C-V2X PC5のどちらで通信するかを選択でき、どちらのバージョンにも対応したハードウェアソリューションを用意しています。
さらに、CANoeでおなじみの便利な機能もすべて使用できます。CANoeとオプションCar2xを使用すると、V2XベースのECUの量産に向けてマルチバステストツールを理想的に拡張できます。
特長
- CANoe.Car2xは、無線LAN規格のWLAN IEEE 802.11pおよび3GPP C-V2X PC5をサポート
- 中国、欧州、米国のプロトコルとアプリケーションメッセージをサポート
- ASN.1ベースのアプリケーションメッセージをデータベースで柔軟に管理することで、ユーザーがアプリケーションメッセージを追加可能
- V2Xドメイン固有の測定ウィンドウ(マップWindowなど)により、効率的な通信解析を実現
- 各測定WindowやCAPL内で、プロトコルやアプリケーションメッセージのすべてのデータ要素に対する個別アクセスが可能なため、解析、刺激入力、テストを柔軟に実行可能
- マップWindowと他の測定Windowを同期させ、地図データと他のデータのオフライン解析を容易に
- あらゆる地域(中国、EU、米国)のセキュリティメカニズムをサポートしており、証明書やプライベートキーと共にPKIの作成、インポート、管理が可能
- Car2xのシナリオエディター、V2Xスタック、ドメイン固有のプログラミングライブラリを使用して、個別のITSステーションのシミュレーションから、車両、インフラストラクチャ、車載ネットワークが含まれる複雑な交通シナリオのシミュレーションまで対応
- シナリオエディターを使うことで、数回のクリックで仮想ルートベースのテスト環境を作成できるように設定可能。製品はEEBL、FCW、EVA、ICWなどの事前に定義されたシナリオを含めて提供
- ベクターのDYNA4で拡張することにより、アプリケーションをクローズドループ環境でテスト可能
適用分野
- ワークステーションまたはHardware-in-the-Loop(HiL)環境下で残りのバスシミュレーションを利用してECUのV2X通信を解析、テスト
- テスト実行中、V2X通信に加えて、さまざまなオンボードネットワーク(Ethernet、CANなど)の通信をモニターおよび測定して記録
- 信号システムやRSUのV2X通信、すなわち、交差点トポロジ(MAP)、信号情報(SPaT)、制限速度などのサイネージ(IVIM)をマップWindowで可視化
- V2X通信と同期して、CANoeのビデオWindowで実際の信号機や交通標識の記録も可能。これには内蔵型または従来型のWebカメラで十分に対応可能
- 記録されたV2X通信をワークステーションで快適に解析
- シミュレーションされた車両を用いた走行テストにおいて、テスト車両への刺激入力が可能
- 信号機の優先順位設定(CAM R09/SREM/SSEM)を、それぞれの通信相手(RSU/バス/緊急車両)をシミュレーションしてテスト可能。特に、バスや警察車両のように通信相手が競合する交通シナリオもこの方法でテスト可能
- ベクターのDYNA4と連携し、広範囲なクローズドループテストを実行可能
機能
アプリケーションメッセージ
CANoe.Car2xでは、ASN.1で定義されたCAM/DENM(ETSI)やBSM(C-SAEおよびSAE)のような任意のアプリケーションメッセージを使用、送信できます。
Car2xネットワークエクスプローラー
解析
マップWindow
マップWindowには、テストシナリオの概要が表示されます。受信したすべてのV2Xオブジェクト(ITS Vehicle Station、ITS Roadside Station)の位置や、受信したイベントが自動的にマップに表示されます。また、CAPLを使って、マップWindowにオブジェクトを描画することもできます。
これにより、テスト固有のパラメータやステータス情報をマップWindowに表示するなど、お客様の要求に応じたテスト設定が可能になります。また、Windowを同期させることで、測定を停止したときに、メッセージをステップバイステップで確認したり、トレースWindowなどの他の測定WindowのデータとマップWindowのデータを比較して解析することができます。
プロトコルアナライザー
トレースWindow
トレースWindowには、V2Xパケット、プロトコル(GB/T DSMP、ETSI、WAVE 1609.x)、アプリケーションメッセージ(C-SAE、ETSI、SAE)を評価するための拡張機能が備わっています。
CANoeの一般機能に加えて、データベースの定義に従ってアプリケーションメッセージをデコードしたり、ドメイン固有の表示内容を実現することができます。列を設定したり、パケット/プロトコル/ITSステーションをカラーで強調表示したり、プロトコルアナライザーのエラーメッセージを解析することができます。また、送信されたメッセージを1行に表示することができるため、とてもわかりやすくなっています。
データWindow/グラフィックWindow/ステートトラッカー
シミュレーション、スティミュレーション、テスト
シナリオエディター
シナリオエディターは、グラフィカルなインターフェイスを使って地図上に交通シナリオを作成するためのアプリケーションです。ここでは、ITSステーションが移動するルートを定義することができます。運転の挙動(速度)は、ステーションのタイムラインで設定できます。また、イベント(V2Xブレーキメッセージなど)を送信するポイントを任意の時点で定義することができます。CANoeにシナリオを読み込んで再生すると、シナリオとV2Xスタックを組み合わせて有効な通信が生成されます。シナリオは、実行中にCAPLなどを利用して、必要に応じて起動、停止することができます。シナリオは、新しい方位を使用して任意のGNSSの位置に移植することもできます、この場合、シナリオマネージャーがシナリオを変換し、新たに定義された位置に作成します。
インタラクションレイヤー
Car2xインタラクションレイヤーは、Car2xデータベースを介して設定され、環境シミュレーションの作成をサポートします。ここでは、ノード(ITSステーション)を作成し、これらのノードから送信されるアプリケーションメッセージを指定することができます。また、CAPL関数ライブラリには、すべてのデータコンテンツやプロトコル情報を設定および読み出したり、送信動作をランタイム時に変更するための関数が用意されています。これにより、メッセージの内容を更新したり、セキュリティ証明書を交換したり、送信を抑制したり、テストの必要性に応じてメッセージの送信前に送信間隔を調整したりすることができます。
関数ライブラリ
CAPLで利用できるCar2x用関数ライブラリ(プログラミングインターフェイス)は、ランタイム時にCAPLからの計測やシミュレーションの動作に影響を与えるドメイン固有の関数を提供しています。たとえば、パケットのデータ内容に対して応答するための関数や、セキュリティパラメータや証明書をクエリおよび変更するための関数、シナリオ属性を照会するための関数、シナリオを制御するための関数などが含まれています。これにより、解析機能の拡張やテストの実装が可能になり、また、状況に応じてランタイム時に動的に応答することが可能になります。
V2Xスタックにより、Timestamp、Sequence Number、Cause Codeなどの、プロトコルフィールドやシグナルの必要なデータすべてを自動的に入力することが可能になります。メッセージの送信間隔も、現状に基づいて計算されます。シナリオも定義されている場合は、アプリケーションメッセージの入力にシナリオデータが自動的に使用され、それに応じて基礎となるプロトコルのデータが調整されます。インタラクションレイヤーや関数ライブラリのすべての機能を使用して、さまざまなテストにおいてV2Xスタックが作成するデータトラフィックに影響を与えることができます。
独立したV2Xスタックによって、各地域(CN/EU/US)の通信動作を管理します。また、V2Xスタックは、EUプロトコルのBasic System Profile 1.5.2もサポートしています。
V2Xスタックは、いくつかのコンフィギュレーションを設定するだけで、V2X ECUを搭載していない車両をV2X搭載車両にアップグレードするオプションも提供しています。この場合、V2XスタックはGNSSデータ(VN4610等で取得)を使用して、現在の位置から実際のV2X動作を生成することができます。
セキュリティ
証明書マネージャー
Car2x証明書エクスプローラー
Security API / IL Security
CAPLで利用できるCar2xの関数ライブラリには、有効な署名付きセキュリティヘッダーを作成するための特別な関数が用意されています。これらの関数を使用することで、ランタイム時にテストノードの証明書を変更して、たとえば、無効な証明書を使用したECUの動作をテストすることもできます。
サポート対象のV2X標準規格
物理レイヤー
- IEEE 802.11p
- 3GPP C-V2X (Cellular V2X) PC5 サイドリンク通信
GB/T規格(中国)
- DSMP (DSRC Short Message Protocol) :Adaption Layer (AL) (GB/T 31024.3)を含む
- Security Header(セキュリティヘッダー)
- C-SAE 0053 アプリケーションメッセージ
- Basic Safety Message(BSM)
- Signal Phase and Time(SPaT)
- Map Data Message(MAP)
- Basic Safety Message(RSM)
- RoadSide Information (RSI)
ETSIのITS標準規格(欧州)
- GeoNetworking(ETSI TS 102 636-4-1およびETSI EN 302 636-4-1)
- Security Header(ETSI TS 103 097)
- Basic Transport Protocol(BTP)(ETSI TS 102 636-5-1およびETSI EN 302 636-5-1)
- 以下をはじめとするETSI ITSアプリケーションメッセージ:
- Cooperative Awareness Message (CAM)
(ETSI EN 302 637-2) - Decentralized Environmental Notification Message (DENM)
(ETSI EN 302 637-3) - Map Data Message (MAP)
(ISO TS 19091) - Signal Phase and Time(SPaT)
- In-Vehicle Information Message (IVIM)
(ISO TS 19321) - Signal Request Message (SREM)
(ISO TS 19091) - Signal Status Message (SSEM)
(ISO TS 19091)
- Cooperative Awareness Message (CAM)
IEEE 1609 – WAVE(米国)
- WAVE Short Message Protocol (WSMP)
(IEEE 1609.3) - WAVE Service Announcement (WSA)
(IEEE 1609.3) - WAVE Security Services (WSS)
(IEEE 1609.2) - WAVE Peer-To-Peer Procotol
(IEEE 1609.2) - 以下をはじめとするSAE J2735 – DSRCアプリケーションメッセージ:
- Basic Safety Message(BSM)
- Signal Phase and Time(SPaT)
- Map Data Message(MAP)
ハードウェア
VN4610
VN4610は、USBまたはEthernetとコネクタ接続することでIEEE 802.11pやCAN (FD) ネットワークにアクセスできる高機能なインターフェイスです。IEEE 802.11pベースのDSRC(Dedicated Short Range Communication)では、5.9GHzの周波数帯で通信が行われます。
VN4610は、V2Xアプリケーションの実装に必要なIEEE 802.11pフレームを、フィルタリングを行わずに送受信できます。受信したIEEE 802.11pの無線フレームは、CAN (FD) メッセージと時間同期してアプリケーションに転送されます。また、GNSSレシーバーが付属しており、GNSS時刻と現在のGNSS位置を取得することもできます。
C-V2X PC5用ハードウェア
CANoe.Car2xは、C-V2X無線インターフェイスとしてAutotalks Craton2 EVK無線ユニットをサポートしています。Autotalks Craton2 EVKは、3GPP C-V2X PC5(サイドリンク)通信を可能にし、CANoeのサードパーティ製ネットワークインターフェイスとして使用できます。ベクターが提供するファームウェアにより、AutotalksのデバイスをCANoeに接続し、CANoeから制御することができます。これにより、フレームの送受信が可能となるだけではなく、たとえば、各フレームの送信電力も設定することができます。
より詳細な物理層のテスト用として、CANoe.Car2xはローデ・シュワルツ社のネットワークシミュレーターCMW500もサポートしています。この接続を容易に行うためのクイックスタート用として、サンプルコンフィギュレーションも用意しています。
PC5無線通信用の汎用UDP/IP通信を介して、サードパーティ製デバイスをネットワークインターフェイスとして接続することができます。ここでは、UDP接続でデータを転送し、特定の関数を使用してCANoeに入力することも可能です。これにより、外部データを読み取ってCAPLで処理することが可能になります。当然、CANoeで生成されたV2Xフレームも、この関数を使ってサードパーティ製デバイスに転送し、処理することができます。
関連情報
- プロダクトインフォメーション: Detailed information about CANoe.Car2x (PDF)