高機能・高性能化が進む自動車開発 - 車載アナログ計測ソリューションの重要性とは?
2020-11-18

高機能・高性能化が進む自動車開発

 車載アナログ計測ソリューションの重要性とは?

自動車開発では、コンポーネントや車両全体を試作したうえで試験を行い、設計通りの挙動や性能を示すかどうかを検証していかねばなりません。その際、温度や加速度等の計測に必要なセンサーは電圧のようなアナログ出力の場合が多く、一方これらの情報の記録や解析はデジタルで行われています。そこで欠かせないのが「車載アナログ計測ソリューション」です。今回は車載アナログ計測ソリューションついて、ベクター・ジャパンの適合ツール部、ビジネスデベロップメントマネージャー望月 佐知也が解説します。

著しい技術革新や開発トレンドの激変で今まで以上にアナログ計測の重要性が高まる

――アナログ値の計測は重要ですが、モデルベース開発を取り入れることで試作品や試作車を用いた試験は減らせると考えています。それに伴いアナログ計測の需要も減るのでしょうか。

 

望月 モデルベース開発は、シミュレーションにより試作での試験を減らせると期待されています。ですが、新規に作ったモデルと現実との差異は必ずどこかに残ります。この差異をできるだけ埋めるため、実環境での試験が必要になってくると考えます。

近年では、電動化や自動運転/ADAS(先進運転支援システム)など技術革新が著しく、新たなテクノロジーを取り入れるたびに新たなモデルが必要となり、そしてその検証が必要となります。モデルベース開発のメリットを享受するには、より効率的に試験できるようにすることが重要です。もちろん、運転フィーリングや乗り心地など“感性”による試験も必要であり、その要素を評価に取り入れる過程でも、高精度なアナログ計測が役立ちます。つまり、これまで以上に試験の効率性や計測精度が求められているのです。

 

――昨今の技術トレンドに関連して、今後のアナログ計測に求められる要件は何でしょうか。

 

望月 まず、EV(電気自動車)などの電動化では、バッテリーやインバーター、モーター等の高電圧・大電流を要するコンポーネントが使われ、走行に伴う電力消費や減速時の回生電力を高精度に計測したいというニーズが高まっています。安全に計測するための絶縁対策はもちろん、モーター・インバーター間のAC電圧・電流やDC部分においても突発的な変動を高精度に捉えるための高速サンプリングレート対応などが欠かせません。

また自動運転/ADASに関しては、走行中に車載バス上を流れるさまざまな信号やECU内部パラメーターなども、アナログ計測と合わせて記録することで、車両の挙動をより詳細に解析することができます。また正確な解析結果を得るためには、きちんと時間的に同期したデータとして記録しておく必要があります。

そして、より高速・多チャンネルでの計測が行われるようになると、当然ながらデータ量は膨大に、計算も複雑になります。そのため、計測ハードウェアのみならず、記録から解析、活用までの一連のプロセスを支えるソフトウェアの重要性も高まっているのです。

小型・堅牢かつ優れた計測精度を誇るアナログ計測ソリューション

――ベクターはアナログ計測ソリューションも扱っているとのことですが、「ソフトウェアの会社」という印象があります。まずはハードウェア製品について説明していただけますか。

 

望月 ベクターは、データ収集ハードウェアに関して卓越した技術を持つドイツのCSM社と、2015年に提携を結びました。CSM社製品は、特に自動車向けに広く使われており、ドイツでは全ての自動車OEMが採用するなど非常に実績のあるメーカーと言えます。

画像:CAN MiniModule設置イメージ
CAN MiniModule設置イメージ

CSM社の計測ハードウェアを代表するのが「CAN MiniModule」です。これはCANに対応した小型のモジュールであり、A/D・D/A変換を行います。センサーからの値をCANメッセージとして出力したり、逆にCANメッセージから電圧・電流、周波数、PWMなどの信号へ変換したりすることもできます。

CAN MiniModuleの大きな特徴は、小型・堅牢であることです。動作補償温度は-40~125℃と広く、IP65、67の防水・防塵性を備え、耐衝撃50G、耐振動5Gと過酷な環境にも耐えられる設計になっています。CANなので複数のモジュールをデイジーチェーン接続でき、数十ポイントもの計測データを1本のバスに統合できます。配線を大幅に減らせるうえに、アナログ配線の短縮で外部擾乱リスクも避けられるというわけです。

とはいえ、CANは最大1Mbpsという低速バスですから、高速・多チャンネルでの計測ニーズに対しては、帯域不足が課題になります。例えば10kHz以上の高速サンプリングレートになると、CANバスでは1点計測でも帯域が逼迫してしまいます。

こういった場面で役立つのが、「EtherCATモジュール」です。EtherCATはイーサネットベースのフィールドバスで、通信速度100Mbpsの規格です。これにより10kHzサンプリングなら最大150チャンネルの計測も可能になります。さらにこの広帯域幅を活かす形でモジュールはチャンネルあたり最大1000kHzまでのサンプリングが可能になっています。この高速サンプリングでは時間同期精度がよりシビアになりますが、本製品はチャンネル間同期について1μsの高精度を実現します。

画像:CSM HV測定モジュールを中心とした高速HV電力測定システム構成例
CSM HV測定モジュールを中心とした高速HV電力測定システム構成例

そして高電圧環境向けの製品が「CSM HV測定モジュール」です。システム全体が電気的に絶縁されており、モジュール内部も高圧部と低圧部の間、高圧部の各入力チャンネル間をそれぞれ絶縁しているほか、モジュール外の高電圧配線には専用の測定ケーブルやプラグ・コネクタを採用しています。小型・堅牢なので測定ポイントの近くに設置することも可能です。

バリエーションも幅広く、中には連続最大1000V/ピーク最大2000V(過渡入力)もの電圧に対応し、かつチャンネルあたり最大1MHz、時間同期1μs以下で測定できるモデルもあります。これらを用いることで、バッテリーの出力電圧・電流、温度・湿度、圧力、インバーターの出力電圧・電流などを、安全かつ高精度に計測できるのです。

CSM社の計測ハードウェアとの親和性が高いベクターのソフトウェア製品

――とはいえ、データ量が膨大なうえに計算が複雑なので、解析処理には時間がかかるのではないでしょうか。

 

望月 おっしゃる通りです。ですがベクターでは、解析を高速かつ高精度に行えるよう、「eMobiityAnalyzer」という専用関数を開発し、「CANape」や「vMeasure exp」に標準機能として搭載しました。この関数を含むeモビリティーおよびHVパワーネット用ライブラリ関数群には、高速なアーキテクチャを用いており、最大1MHzサンプリング×30チャネルの処理能力を提供します。

画像:CSMモジュールとeMobiityAnalyzer関数による電力解析結果
CSMモジュールとeMobiityAnalyzer関数による電力解析結果

さらに、CSM社の計測モジュールと当社ソフトウェアを高度にマッチングさせ、極めて高い精度の時間同期を実現し、高精度な電力解析が可能となりました。ドイツで行った検証では、欧州を中心にテストベンチで広く使われている既存のボックス型電力計測器の結果と比較しても遜色ない解析結果が得られています。CSM社の計測モジュールは実走行試験でもテストベンチでも、ラボでも共通して使えますから、私たちのソリューションならボックス型電力計測器は不要で、複数の計測環境を用意する必要がありません。

当社のソフトウェア製品は、強力な解析・レポート機能を備えているのも特徴です。CANapeやvMeasure expのダッシュボード画面には、さまざまなデータの時間同期計測に加え、GPSデータからの地図プロットや、USB接続のカメラ等を用いて撮影した動画なども合わせて表示することができ、車両の総合的な状態をほぼリアルタイムで把握することができます。

また、オフラインの解析に特化した「vSignalyzer」では、レポート出力、定型化されている内容ならデータを投入すれば自動でアウトプットできるため、データ整理の時間も大幅に削減できます。ユーザーが開発したアルゴリズムをスクリプトなどの形で容易に取り入れることもでき、お客様それぞれのニーズに合わせ柔軟にご活用いただけます。

 

CSM製品を含めたソリューションを ベクターがワンストップで提供・サポート

――ベクターは自動車メーカーに対し、どのような形でサポートしているのでしょうか。

 

望月 日本をはじめとしたアジア圏では、CSM製品を含めたアナログ計測ソリューションをワンストップでベクターが提供・サポートします。もちろん欧州や米国でも弊社とCSM社は密に連携をしており、ワールドワイドでサポートすることが可能です。しかもベクターは特定の自動車メーカー系列に属さない独立系ベンダーですから、メーカー間の協業・競合関係も意識する必要がありません。国際共同開発においても、ベクター+CSMの計測ソリューションを、共同開発を行う両メーカーが採用することで、共通のソリューションを弊社のサポートのもとで使うことができます。特に欧州自動車メーカーの多くが私たちの計測ソリューションを採用していますから、日本の自動車メーカーがそれらと共同開発するといった場面で、共通理解のベースになることでしょう。

また、ベクターはエンジニア陣のフットワークが軽いのもポイントです。お客様の解析現場にベクターのエンジニアが参加し、解析業務を支援することも多いので、常に最新のニーズを把握しています。加えて、ベクターとCSMのアライアンスはセールスだけでなくR&Dにも及んでおり、両社は協調して製品を進化させ続けています。組み合わせてソリューションとして使っていただくことで、可能性が広がっていくのです。

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