車載イーサネット コネクテッドについて
自動車の安全性や快適性を高める技術として採用されているコネクテッドや自動運転の実現などの向上に欠かせないのはより高速で信頼性の高いネットワークです。従来の車載ネットワークよりも速いことで注目される車載イーサネットとは何か、適用分野やコネクテッドとの関連、さらに導入の課題などについて紹介します。
現在市販されている自動車にはさまざまな安全・快適な機能が導入されています。さらに高度な安全運転支援システムや自動運転技術の実現、付加価値サービスを提供するための基盤技術の一つとして注目されているのが、車載イーサネットの活用とコネクテッド技術の採用です。
この記事では、車載イーサネットやコネクテッドとは何か、車載イーサネットは従来の車載ネットワークと何が違うのか、それらが使用される目的や事例などについて紹介します。
次世代の車に必要不可欠な車載イーサネットとコネクテッドについて
次世代の車に求められているのは、安全性の高さと利便性の良さで、これらを実現するために注目されているのが、車載イーサネットとコネクテッドです。
車載イーサネットやコネクテッドはどのようなものか確認してみましょう。
車載イーサネットとは車用のイーサネット通信規格のこと
イーサネット(Ethernet)とは、LAN(ローカルエリアネットワーク)に採用されている通信規格のことです。
オフィスや家庭などでは有線LANや無線LANが使用されていますが、次世代の車用のネットワーク技術として注目されているのが車載イーサネットです。
通信で車が外部と繋がるコネクテッド
コネクテッド(connected)とは「接続した」という意味があるように、車においては通信により車と外部が繋がることを示しています。
たとえば、自分が乗っている車と交差点にある信号など車に関連する周辺施設などと接続することでさまざまな可能性が広がってきます。
既に実用化されているコネクテッドの例としては、カーナビ情報をスマホ経由で取得した走行距離から保険料が決まるサービスなどがあります。
また、車同士をつなげて通信して前方を走行している車と一定距離を保って追従できるCACC(コーペラティブ・ダプティブ・クルーズ・コントロール)のように車の安全性能をさらに高める機能にも活用が期待されています。自動運転が実用化されると、車は所有するものから移動のためのサービスの一部となり、車の付加価値が車の提供する機能からサービスに移っていく可能性があります。サービスは主にソフトウェアで実現されます。サービスや機能実現のために車の内部だけでなく、クラウド上のソフトウェアを使用することも想定されています。例えば、経路を計画するパスプランニングなどの機能の一部をクラウド上のソフトウェア実現することも検討されています。さらに自動運転システムは迅速に問題を修正する必要があり、利便性を考えればリモートで車のソフトウェアを更新することが前提となります。そのため、コネクテッドであることが必須となります。
多様化するコネクテッドの発展に欠かせない車載イーサネット
車の安全性や利便性の良さを追求するほど高い機能が求められるほど、コネクテッドに必要な情報量も膨大になります。
コネクテッド以外に次世代の車に求められる技術にAutonomous(自動運転)、Shared&Services(カーシェアリングやサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった「CASE」を組み合わせることが重要視されていることから、多くの情報をスムーズにやりとりできるネットワークが必要とされています。
従来採用されてきた車載ネットワーク
車載ネットワークの基幹プロトコルとして使用されてきたのがCAN(Controller Area Network)です。
車のエンジンやABS、ステアリング、ドアなどに使用されており、ブレーキやスロットル、カーナビ、スイッチ、センサなどに応じてCAN以外のネットワークが使用されています。
それぞれのネットワークは通信速度やコストが異なるため、得意とする分野に応じて採用されています。
CANの最大速度は低速CAN(ISO 11898-3)が125kbps、高速CAN(ISO 11898-2)が1Mbpsで通信速度やコストの面では、LINやFlexRayといったネットワークの中間に位置しています。現在、最も普及している高速CANで、車ではノイズの影響を考慮して500kpbsで使用されるのが一般的です。
従来の車載ネットワークよりも速い車載イーサネット
車載イーサネットは従来の車載ネットワークよりも速いのが特徴で、より多くの情報量を伝達できます。
現在、車に搭載されている車載イーサネットの伝送速度は100Mbpsですが、1Gbps(1,000Mbps)と10Mpbsも規格化されています。、さらにマルチギガ(最大10Gbps)や10Gbpsを超える規格も策定が進められています。このように車載Ethernetは幅広い速度に対応可能なネットワークであるため、高精細などカメラ画像や高精度なセンサーデータ、音声データなど、どさまざまな用途で使用され、適用範囲が広がっていくと考えられます。
車載イーサネットを活用した車の未来像
車載イーサネットを活用することで、自動運転技術の精度を高めることができます。
自動運転にAI(人工知能)や高精細なカメラで周辺の状況を確認し、車載レーダーなどで走行中に思わぬ障害物があっても安全に検知するなど、人間の運転技術よりも安全性の高い自動運転を実現できる可能性が広がります。
当然ながら運転中は一瞬の判断が人の命を左右することから、危険を察知した時には瞬時に対応できる環境が求められ、そのためには周辺環境の大量のデータを高速で処理し、適切な応答速度で自動的に運転操作を行う必要があります
そこで、伝送速度が優れている車載イーサネットの活用が注目されています。
車載イーサネットの導入の課題
EthernetはEthernet フレームだけでなく、IPv4, UDP/TCP, ICMPなどさまざまな上位プロトコルを使用する点で、CANに比べると複雑になります。そのため、CANと同じ考えでテストを行えばよいというわけではなく、プロトコルに応じたテストを行う必要があります。使用するプロトコルが増えればそれに伴い、テストの数も増え、ソフトウェアで提供される付加価値サービスの検証のために、ソフトウェアの単体テストも重要になります。そのため如何に効率よくテストを行うかが重要になってきます。
車の付加価値向上や自動運転に必要なコネクテッドの技術
車の付加価値向上のためにコネクテッドなどの技術が積極的に活用され、自動運転も実用化されると、さまざまなサービスがコネクテッドを通じて利用できるようになり、車での移動はさらに利便性や快適性が向上します。5G通信によりコネクテッドの通信速度も高速化や高度な安全運転システムと自動運転の実現化などのために、車載ネットワークもさらに高速な車載イーサネットの導入が見込まれます。新しい高速ネットワーク導入には、ノイズの問題や部品や通信の信頼性、開発やテストを行うためのノウハウの蓄積や効率化などさまざまな課題があると考えますが、エンジニアの努力のよる技術の進化、テストツールなどの活用により解決できるでしょう。