CANopenの概要
CANopenは、CAN(Controller Area Network)システムをベースとし、ネットワークモデルの第7層(Applicationレイヤー)に通信とデバイスプロファイルを定義したものです。
CANopen仕様は標準化され、フレキシビリティーとコンフィグレーション可能な組込ネットワークアーキテクチャーとして、鉄道分野、医療機器、産業機械、農業機械、トラック/バス、船舶/航空、FAなどの様々な分野で採用されています。また、従来のRS-232/485など独自規格で設計された組込ネットワークから置き換えられるケースも多くあります。仕様書は通信関連と各種デバイスの機能別にプロファイルが標準化されています。
現在、これらの仕様は、国際的なユーザ ーとベンダーのグループであるCiA (CAN in Automation) がまとめており、ライセンスフリーなオープンネットワークとして採用することが可能です。
特長
- 標準化されたオープンネットワーク
- プロトコルのオーバーヘッドがなく、リアルタイム通信を実現
- ノード構成が自由で、高いスケーラビリティー
- 高い互換性
- “Interbus”、“Profibus”に似たプロファイルコンセプトを採用
- 世界中の多くの企業が採用
基本情報
CANopen標準規格

この標準規格の骨子は、EUに資金供給されたプロジェクトの一環として開発されました。1995年に、その時点までに作成された規格書がCiA e.V. (CAN in Automation) という組織に引き渡されました。それ以来、このCANユーザー組織の後援により、その標準規格の保守開発が行われています。2002以降は、ヨーロッパ標 準規格 (EN 50325-4 2002 Part 4: CANopen) として使用されています。
CANopen標準規格には、CANベースのネットワークにおけるデータの送受信プロトコルが定義されています。この標準規格には、基本的な通信メカニズ ム(通信プロファイル)と、通信デバイスの機能(デバイス プロファイル)が定義されています。つまり、バスを使用して送信されるプロセス データの解釈も、CANopen規格で定義されています。

Object Directory
各CANopenデバイスは、定義されたインターフェイスによって内部データ(プロセス データ、パラメーター)をバスで使用できるようにします。これらの内部データは、Object Dictionaryで整理されています。Object Dictionaryのエントリには、16ビット インデックスと予備の8ビット サブインデックスで行います。インデックスの範囲は、ユーザーに分かりやすい構造を構成するために、論理セグメントに分割されます。たとえば、デバイス名 は、インデックス0x1008から読み出されます(サブインデックス0)。
インデックス (hex) | オブジェクト |
0000 | 未使用 |
0001-025F | データ タイプ |
0260-0FFF | リザーブド |
1000-1FFF | 通信プロファイル領域 |
2000-5FFF | メーカー固有のプロファイル領域 |
6000-9FFF | 標準化されたデバイスプロファイル領域 |
A000-AFFF | 標準化されたインターフェイスプロファイル領域 |
C000-CFFF | リザーブド |
通信の原則
CANopenを使用するバス通信には、基本的に2種類の通信があります。SDO(Service Data Object)を使用すると、オブジェクト ディクショナリの必要なエントリに任意でアクセスすることができます。これらのエントリは、CANメッセージの最大許容サイズ(8バイト)を超えることが多いので、SDOによってデータがセグメント化されます。SDOは、2つのパートナ間の通信にのみ使用されます。1つのデバイスから同じ情 報をいくつかの別のデバイスに送信する場合は、PDO(Process Data Object)を使用します。原則として、PDOは任意にコンフィギュレーション可能なCANメッセージです。この設定は、オブジェクト ディクショナリのエントリで行います。
ネットワーク構造
CANopenネットワークでは、最高127個の論理デバイスを制御することができます。そのデバイスのうちいずれか1つは、CANopen NMT Masterの機能を果たす必要があり、そのNMT Masterは、NMT Slaveと呼ばれる他のデバイスを監視し、その状態を変更することができます。各デバイスは、1から127までのノード アドレスによって一意に識別されます。

仕様
規格書
CANopenの規格書は、CiA. e.V. のWebサイトから入手することができます。非常に重要な規格書を以下に挙げます。
- DS 301 - この規格書は、通信プロファイルとして知られており、CANopenで使用される基本的なサービスとプロトコルが定義されています。
- DS 302 - CANopen Manager, SDO Managerおよびプログラム可能なCANopenデバイスのためのフレームワーク
DR 303-3には、ケーブルとコネクタに関する情報が定義されています。
既に数多くのデバイス クラスの動作や制御が、デバイス プロファイルと呼ばれる規格書(DS 4xx)で定義されています。デバイス プロファイルには以下の様な内容が定義されています。
- 実行時の動作
- オブジェクト ディクショナリのデバイス固有のオブジェクト
- エラー処理
- PDOの標準コンフィギュレーション
CANopen開発プロセス
ここでは、各種ツールが開発プロセス全体を通じてユーザーをいかに包括的にサポートするのかを説明します。








CANopen用ツール
ベクターのソフトウェア ツールは、CANopenのシステムとコンポーネントのシミュレーション、開発、解析、テスト、診断を行うための幅広い機能を備えています。
ツール | |
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CANopenネットワークの開発およびテスト
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CANopenネットワークの解析
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CANopenネットワークのプロジェクトプランニングと設定
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CANopenデバイスのためのEDSジェネレーター
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CANopen用ハードウェアインターフェイス
開発、シミュレーション、テスト、分散システムの保守に使用されるソフトウェアツールには、高性能でフレキシブルなハードウェアインターフェイスとロギングソリューションが必要です。
ベ クターは、CAN、LIN、J1708、Ehernet/IP、FlexRay、MOST用のインターフェイスだけでなく、ベクターのソフトウェアツール やお客様固有のソリューションで使用するドライバーソフトウェアおよびプログラミングインターフェイスを提供しています。
バスシステム | インターフェイス | PC接続 |
---|---|---|
CAN, CAN FD, LIN and J1708: | USB (RT PC) USB USB (OBD) PCI PCIe PXI | |
Ethernet and CAN / CAN FD: | USB | |
FlexRay and CAN / CAN FD: | USB (RT PC) PCIe USB USB | |
CAN、 LIN、J1708、FlexRay用バストランシーバー |
* CAN FD未対応
関連情報
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